最近、ニュースフィードの傾向が変わってきたと思いませんか?
Facebookがアルゴリズムの変更を頻繁に行っている。かなり大きな、そして根本的な変更だ。2年間のアルゴリズム変遷を年表にしてみた。そこからわかってきたのは、Facebookは本来の姿に戻って再び「友達」最重視に切り替えつつある、ということだ。
▼まず結論を
ニュースフィードは一般ユーザーに有利な方向に変わりつつある。逆に企業やブランド、商店、個人サービスなどのFacebookページには逆風が吹くだろう。表示を上げるための姑息な手段はほぼ通じなくなっている。創設から10年がたち、Facebookはルネッサンスを目指している。“原点返り”であって、後退ではない。コンテンツの質を重視し、友達との関係性にもう一度力点を置き直すというのは、とてもよい企図だと思う。
■アルゴリズムは投稿の表示を左右する
最近2年間のアルゴリズムの変遷を見る前に、「Facebookのアルゴリズム」について少しだけ説明しておきたい。
ほとんどの人はニュースフィードを「ハイライト」表示で見ていると思う。Facebookのデフォルト(初期設定)がそれだからだ。ハイライト表示だと全部の投稿は届かない。友達やFacebookページの投稿はかなり間引きされる。どれを表示するかを決めるのは……、それがFacebookのアルゴリズムだ。
もうひとつの表示方法が「最新情報」。こちらは時間順に「すべて」を表示する……、と言いたいところだが、こちらでも投稿は間引きされている!
※(参考)★あなたの投稿は友達に届いていない! 知らないと損するFacebookの掟
「ハイライト」にしても「最新情報」にしても、Facebookがニュースフィードに友達やページ投稿のすべてを届けることはない。アルゴリズムは表示を抑制するだけではない。ニュースフィードで行っているのは機能のほんの一部。Facebookでいろいろおかしな現象が起きる、例えば▽友達ではないかと聞いてきたり、▽イベントに招待したり、▽広告の推奨者になったり、そういうFacebookらしい仕組みをコントロールしているのがアルゴリズムだ。
で、このアルゴリズムを駆使してFacebookは「あなたが見るべき“最適の投稿”をあなたのニュースフィードに届ける」と言っている。投稿表示の最適化をユーザーごとに行う、そしてその精度を上げる。Facebookは大まじめに、今もこのブラッシュアップに取り組んでいる。
Facebook側から言えば「機能のブラッシュアップ」だが、ユーザーから見れば①表示を大幅に削られる上に、②たびたびのアルゴリズム変更に振り回される、ということになる。アルゴリズムは「ニュースフィードの表示ルール」であり、法律みたいなものだ。それを変更する結果、今までは表示されていた友達やページの投稿が変更後はパッタリ、などという激変が起きる。
ユーザーにとってはかなり迷惑。しかしFacebookは手を緩めない。
■あざむくコンテンツは排除する方向
2013年以降のニュースフィードの主なアルゴリズム変更を表にした。
ニュースフィードのアルゴリズムの変更点と ユーザーによる「カスタマイズ」 |
|
---|---|
2013/8/6 | 投稿から時間がたっても人気投稿は上位に表示<Story Bumping> |
ユーザーが最近エンゲージメントしたページの投稿を優遇<Last Actor> | |
2013/12/2 | ミームコンテンツの表示削減 |
リンク付きの投稿を優遇 | |
コメントされた記事を上位に再表示 | |
2013/12/8 | 「フォローをやめる」機能を追加 |
2014/1/21 | 文字だけの投稿は表示されにくくなる(Facebookページ) |
2014/4/11 | いいね!、コメント、シェアをけしかける投稿を表示しにくくする |
同じ投稿を何度もシェアするページの投稿表示を下げる | |
スパムリンクで広告クリックを狙う投稿の表示を下げる | |
※上記3つの対応はユーザーからのネガティブフィードバックに基づき実施する | |
2014/8/25 | 思わせぶりな文章や画像でクリックを狙う投稿の表示を減らす <Click-baiting> |
投稿にURLを含むときは、画像に含めるよりリンクを明示した方を優遇 | |
2014/9/18 | 素早い反応を得た投稿が優遇される<Trending Topics> |
2014/11/7 | 「ニュースフィードの設定」を追加 |
2014/11/14 | 宣伝色が強い投稿の表示を減らす |
2015/1/15 | 作り話、デマとユーザーから報告された投稿の表示を減らす |
2015/4/22 | 親しい友人の投稿を上位に表示し、Facebookページの投稿は順位も頻度も下げる |
2015/6/12 | ユーザーが長く表示した投稿の表示優先度を高める |
2015/7/9 | 「トップに表示」機能を追加 |
■よいコンテンツは表示で優遇
簡単に解説しよう。
2013年夏には2つの大きな変更があった。
▼ストーリーバンピング Story Bumping いいね!などがたくさん付いた投稿は時間がたってフィードの下の方に行ってしまっても、ユーザーが新たにニュースフィードを開始すると上位に表示し直す。価値ある投稿は、“時間”を超越する。
▼ラストアクター Last Actor この発想は上とは逆だ。ユーザーが直近にページを見たり投稿にいいね!、コメントしたようなページの投稿を優先的に表示する。個人ページ、Facebookページ共に適用。直前に何らかのアクションを得たページが有利になる。
2013年は冬にも大きなアルゴリズム変更を行った。
▼ミームコンテンツの削減 「ミーム」の意味が分かりにくいと思う。流行ったネタの模倣と言えばいいだろうか。例えば日本で言えば「一杯のかけそば」のような▽一発狙いの人情もの▽ジャンクストーリー▽猫の写真にシュールな言葉を書きなぐったような写真――。マーケターがろくでもないツールを売るためにこんな手をよく使った。感情に訴えるこの手の記事は、初期のFacebookでは大成功し何万ものいいね!、シェアを集めるケースもあった。しかしその本質は“吊るためのコンテンツ”であり内容は空疎。
というわけでFacebookは退治に乗り出した。
冬の変更では他に、「リンク付きの記事」の優遇も行った。写真付きの記事よりもさらに優遇。ユーザーがリンクをクリックした記事はニュースフィードの上位に表示される。またストーリーバンピングの補強の1つとして、古い記事でもコメントをされるとニュースフィードに再登場させるようにした。
2014年にもアルゴリズムの大きな変更があった。
上の表4月11日の項をご覧いただきたい。▼「いいね!、コメント、シェアをけしかける投稿」とは下の写真のようなコンテンツのことだ。あなたにも見覚えがあるのでは? かわいい写真でいいね!を集める。しかし記事の内容とこの写真には関連性がない。呼び込むためだけの写真。こういった手法の投稿は表示を下げる。
もうひとつは▼「頻繁にシェアされる投稿の表示削減」。Facebookページの運営者の中には、何度も同じ記事をシェアする者がいる。ユーザー側から「うざい!」という苦情もしばしば。そういうページからの投稿は表示を抑制することにした。
▼「スパムリンク」。写真をクリックしたら広告ページに飛ばされた、なんて記事も言語道断だ。これも表示抑制の対象になる。
■「ネガティブフィードバック」を表示に反映
2014年4月のアルゴリズム変更の最大の注目点は▼「ネガティブフィードバック」の“効果”を実際に示した点だ。
「ネガティブフィードバック」とは、下の写真を見てほしい―――
ニュースフィードの記事は、右隅をクリックするとこんな表示が出てくる。「投稿を非表示」「フォローをやめる」「投稿を報告」がネガティブフィードバックだ。その逆に「お知らせをオンにする」は「この人の投稿を読みたいので投稿があれば知らせてほしい」という意味。肯定的な評価だ。
このように、すべての投稿は評価の対象になっている。ユーザーはプラスにしろマイナスにしろ、Facebookに「評価」を伝えることができる。
評価を伝えるだけではない。非表示にすれば直接的にその投稿はニュースフィードから消えるし、フォローをやめればその友達の投稿はニュースフィードに現れなくなる。しかし「投稿を報告」した結果、その投稿や情報発信者がどうなるのかについてはFacebook任せだった。
今回のアルゴリズム変更で、「スパム報告」は表示を下げる方向に働くことがわかった。さらに非表示にされたりフォローをやめられたりすることが多いユーザーの投稿は、表示されにくくなるだろう。ネガティブフィードバック恐るべしである。
■姑息なテクニックには罰を!
同年8月の▼クリックバイティング Click-baitingも排斥の対象だ。
「クリックさせるエサ」として使われる記事や写真。首尾よくクリックさせても、クリックしたユーザーが「内容がない」「くだらない」「引っ掛けられた」と感じてすぐに離脱したような場合、その記事の表示率は下げられる。
今回Facebookは、特定の記事やコンテンツに誘導するための▼「URL組み込み」の対応についても明らかにした。画像自体にリンクを組み込みURLを見えなくするより、URLを明示してリンクする記事の方を優遇するようにした。URLが見えた方がリンク先の記事の内容を類推しやすいからだという。
▼トレンディングトピックス Trending Topics 9月18日から実施したこれは、投稿直後からいいね!やシェアが殺到したような投稿を優遇するというもの。これまでもユーザーはなんとなく『そうなんだろうな』と感じていた、その思いを改めて認めたような機能だ。アルゴリズムのこういう傾向が分かると、ユーザーとしては「投稿のタイミング」を考えざるを得なくなる。閲覧してくれる友達が多い時間帯を狙って投稿した方が記事は広がっていくからだ。
2014年はさらに11月14日にもアルゴリズムの変更を告知した。
▼宣伝色が強い投稿を遠ざける、と発表したのだ。▽商品の購入を求める▽アプリのインストールを誘導▽記事や写真と関係ないプロモーションへの誘導▽自社が行った広告を流用しただけの記事――などが対象になる。これらの記事の表示制限もユーザーの意見(フィードバック)に基づいて行われる。企業ページなどがニュースフィードへの表示を狙って行うあの手この手を、ことごとく封じようとするFacebook側の意図が強く伝わって来る。
■親しい友達の投稿を重視
2015年に入って1月15日には▼「ウソ」や「デマ」とユーザーが報告した投稿の価値を下げた。これもネガティブフィードバックの徹底。
そして4月、Facebookは抜本的な方針転換を図った。
▼親しい友達の投稿を重視する、という方向性の再確認だ。
これまでも「友達」は十分、ニュースフィードで優遇されていた。もっとも2010年―2012年にかけてのニュースフィードは、Facebook自身が企業や法人、有名人のビジネス用アカウントを求めていたため、これら発のFacebookページの記事がニュースフィードをにぎわしていた。それに比べると現在のニュースフィードは様変わりだ。はっきり言って“ブランド重視の時代”は終わった。友達との交流を軸にした本来のFacebookに戻そうという意思が感じられる。
今年はさらにもう1つ重要なアルゴリズム変更を行っている。
▼ユーザーに長く表示された投稿の優遇だ。目立たないが非常に重要な変更である。なぜなら「投稿価値」を測る尺度を変えると言っているのだから。
今までの主な尺度は「いいね!」「コメント」「シェア」の数。そしてそれらアクションが引き起こされた時間。簡単に言えば、いいね!が殺到するような記事は「よいコンテンツ」とみなされ拡散力が強かった。
今回はそういう尺度とは別に「その投稿が表示されている時間」に注目した。いいね!やコメントが少なくてもじっくり読まれている、例えば災害の記事や人の消息、直接の交流はないが興味ある人の投稿などなど。いいね!はしにくくても気に留めて読むということは、その人にとっては価値のある投稿だと認定できる。Facebookはスクロールを止めて長く表示した投稿を感知して、以後、この投稿と類似した記事の表示優先度を上げることにした。
■「よいユーザー体験」が究極の狙い
結局、長い解説になってしまった。
Facebookのアルゴリズム変更はその都度、主にFacebookページのオーナーやFacebookマーケティングに興味のある人たちによって、ひとしきり騒がれる。どうしたら「アルゴリズム変更」の大波を乗り越え自分のページの表示を上げられるか、対応策ばかりが語られる。
今回あえて私が「2年間のアルゴリズム変遷」を俯瞰したのは、個々のバタバタ騒ぎでは見えにくい“Facebookの意向”や今後の方針がはっきり見えてくると思ったからだ。予想通りだった。見えてきたもの、それは―――
Facebookもまたユーザー体験を絶対的な価値と考えている、ということだ。
元々Facebookは「友達」を重視している。個々のユーザーと、ユーザー同士の関係性に着目してきた。「関係性」をつかめばユーザーが関心をもつであろう投稿がわかる、その投稿を的確に表示させる、つまりユーザー体験の最適化こそが使命とFacebookは言ってきた。しかし2010年からしばらくはビジネス志向のFacebookページにも気を使った。ダブルスタンダード(二重基準)に陥ったのだ。交流かビジネスか。ここにきて真剣に考えざるを得ず、結局Facebookはなり直しすることを決めた。ビジネスではない、友達を軸とした交流こそがFacebookの本質である、と!
ここ2年間、Facebookは懸命にそこに戻ろうとしている。
「Facebookもまた」と書いたのは、Googleという先例があるからだ。
ビジネスが先行すると、どの国でも目先の得、利益にかまけてノウハウやテクニックばやりとなる。ユーザー置き去りのいびつな競争が始まる。「検索」がネットの世界では“神”となった。Googleはそれを自覚している。だからこそ「ユーザー置き去り」は許せないのだ。ユーザーを無視しGoogleの裏をかいて上位表示を狙うような方法は断じて認めない。Googleは総力を挙げて数回の抜本的なアルゴリズム変更を行い、検索するユーザーが読みたいと思っているコンテンツをドンピシャリで表示するシステムをつくりあげた。
Googleは良いコンテンツを適正に評価する。わかりやすく、ユニークで、知識が深くて正確、そしてタイムリーなコンテンツ。
Googleが言いたいのはただ一つ、「検索で上位表示されたいなら、(上記のような)よいコンテンツをつくれ」だ。“上位表示させるためのテクニック”などいらない。
Facebookの方向性も「コンテンツ重視」だ。
太字で記した文章を読み返してほしい。ズルイ、くだらないテクニックは排除する、そしてユーザーが評価するよいコンテンツは優遇する、と明言している。ネット界のビッグ2が目指しているのは共に「コンテンツマーケティング」。大切なのはコンテンツの内容。ユーザーから求められているコンテンツはより目立つように表示されることになる。
■ニュースフィードのカスタマイズ実現
2年間のニュースフィードの変化を見てきた。流れをつくっているのはアルゴリズムだ。2年以前にはビジネス指向のFacebookページを優遇する方向に流れることもあった。しかし結局、個人ユーザーを大切にするという原点に戻ってきた。この流れをユーザーは止められないだろう。
アルゴリズムという大きな動力が作り出す流れはいったん方向が決まれば、個々人があらがう術はない。しかしもう1つ注目すべき変化がある。
Facebookはこの2年間で、ユーザーの裁量権を広く認める方向を打ち出してきた。表で赤字で記た機能がそれだ。
▼フォローをやめる 「友達」でありながらその人の投稿をニュースフィードに表示させない機能。Facebookページの“ファン”になったけれど、結局そのページの投稿はニュースフィードで受け取らない、という場合にも使える。
▼ニュースフィードの設定 友達とFacebookページの「フォローをやめる」を手軽に行える設定。
▼トップに表示 特定の友達やFacebookページの投稿(複数設定もOK)をニュースフィードのトップに表示する機能。
ニュースフィードの大きな流れは変えられないものの、個々の投稿では見たい記事を優先し、見たくない人の投稿は完全に遠ざけることができる。かなりわがままなニュースフィードのカスタマイズが実現する。
この先Facebookはどこに行くのだろうか。
答は1つ。良いコンテンツの優遇だ。友達のであろうとFacebookページのであろうと、多くのユーザーが読み「よい」と認め、本当に感動し、目を開かせてくれるような投稿を優遇するようになるだろう。友達との交流を太いバックボーンにしながら、読まれるべき“よいコンテンツ”は友達から友達を経由してこれまで以上に広がっていくはずだ。
【Facebook活用のヒント集】
★ニュースフィードをカスタマイズしよう! 快適に「Facebook友達」とつきあう法
★特定の友達の投稿を「トップに表示」、Facebookが新機能を追加!
★スマホで「結婚式のアルバム」を友達に送る法!すべてスマホで完結
★「最新情報」に切り替えてもFBの投稿すべては見られない。でも、試す価値ある機能だ!!
★コメントもらったら「すぐ下で返信」。Facebook個人ページに新機能!
★Facebookの「誕生日メッセージ」殺到に悩む人に効く処方せん!
★Facebookのストーカーを99%排除する法! 最後の1%はコレを……