★「次郎長生家」はなぜFacebookコンテストで勝ったか? 基本に徹した”説得”が効果!

残したい建物
Ads by Google




Pocket

 

2014年の暮れ(正確には9月22日~12月31日)興味深い”選挙”があった。
あなたの残したい建物コンテスト」という。投票券はいいね!ボタンだった。
このFacebook選挙の勝者は静岡市の「清水次郎長の生家」だったのだが、
スモールビジネスの勝ち方」の手本のような戦いぶりだったので紹介したい。

 

投票行動の舞台はFacebookである。このことを強く意識していただきたい。
2010年にFacebookが普及し始めたころ、スモールビジネスからは期待が大きかった。
ビジネスに使える、これで広報がうまくいく、人が来てくれる―という希望があった。
しかしFacebookは使ってみるとなかなかの難物で、思ったような成果が得られない。
みな使い方を間違っているからだ(とエラそうに書いているが、私も同じだ)。
次郎長組の勝因は、このFacebookの特性を見抜いて基本に徹しきったことだった。

 

■「残したい建物」を選ぶFacebook選挙

コンテストはSE工法を推進する「耐震住宅100%実行委員会」が主催した。
後世に残す価値のある建物を一般の人の投票で選び、1位には無償で耐震工事をする趣旨。
全国から100余の建物がノミネートされ、一次審査を経て、8つが最終候補に残った。
“投票券”は建物それぞれに付与された「いいね!ボタン」。誰でも参加できる。

 

コンテストの結果を先に示しておこう。(2014年12月31日正午締め切り)

残したい建物

「あなたの残したい建物コンテスト」の最終結果はこのようになった
赤枠の建物が「清水次郎長の生家。青枠の2つの建物と激しく競り合った

 

1位となったのは赤い枠で囲んだ「清水次郎長の生家」(静岡市)で、2732票、。
2位は下段ブル―の枠の「旧喰丸小学校」(福島県昭和村)2279票。
3位、上段ブルー枠の「ゆたかな倉庫」(山梨県南アルプス市)1710票。

 

「旧喰丸小」は映画「ハーメルン」の舞台になった小学校で、村議会が解体を議決している。
「ゆたかな倉庫」は養蚕業の流通拠点として使われた倉庫だが、これも今は解体を待つ。
どの建物も過去の光はとうに失せている。解体にも補修にも金がかかるやっかいものだ。
しかし意義を認める人たちにとってはかけがえのない存在であり、だからこそ
「1位になって耐震化をしてもらい、永久保存に道を付けたい」と強く願っていた。

 

■パッとしないコンテストに本気の人々が異変をもたらした

全国民を対象にしたコンテストにしては、いいね!の少なさに驚かれたかもしれない。
トップの「次郎長の生家」でも2700余票。2000の大台を超えたのは2つにすぎない。
3位の「ゆたかな倉庫」は一時急追し1位、2位を脅かしたが、勢いは続かなかった。
他の建物はおおむね100台~400台止まり。地域の関心すら引けなかったという印象だ。

 

大手や有名企業、ディズニーやコカ・コーラのコンテストなら投票数は数百万だろう。
国内のユニクロやキリン、味の素といった有名企業でも、数十万票を争うのは確実だ。
これらがFacebookの成功事例のように語られ、万の単位が当たり前に見えるが、それは違う。
力のある企業は、莫大な費用と手間暇をかけ多メディアを駆使してこの数字を出している。

 

これに対して「耐震住宅100%実行委」はほぼ無名の団体であり、テーマも一般受けしない。
Facebookや(に限らないが)SNSは個人が発信するメディアであるから、無論、
誰にでもチャンスは与えられている。しかし広く受け入れられ注目を集めるのはごく少数だ。

 

今回のコンテストも、投票解禁から3か月かけてトップが700票弱という反響にすぎなかった。
動きがあったのは次郎長組が地道な呼びかけでトップの「喰丸小」をとらえ、喰丸小側もまた
逆転されたことに驚き必死の巻き返しに出た、クリスマス以降の”最後の1週間”だった。
それまで視野にも入らなかった3位の「ゆたかな倉庫」も26、27日にかけ猛烈に追いかけた。
こうしてコンテストはみつどもえ戦の様相を呈し、つばぜり合いはおおみそかまで続いた。

 

私は12月24日午後、友達の呼びかけでこの競い合いに間接的にかかわることになった。
以後1週間、時々刻々と変わる数字を興味深く追いかけた。
最終的に、次郎長組はラスト1週間で追加2000票を積み上げた!(従来票の3倍)
ライバルの喰丸小も1600票弱を集め、最後まで再逆転に執念を燃やした。
この競り合いがなければコンテストはパッとしないままで終わったに違いない。

「よくぞここまで・・・・」私はすなおに終盤に驚異的な集票をした3グループを称えたい。

 

■友達が結束して粘り強く友達を説得

友人からメッセージが届いたとき「これはFacebookの選挙だぞ」とあらためて肝に銘じた。
問われるのは以下の4点だ。

  1. 友達の結束力(共感を広げていく上での結束力)
  2. 友達の粘り強さ(個々の友達をたぐって投票を促す)
  3. プレゼンテーション能力の高さ(趣旨に共感してもらう説得力のある文章)
  4. 最後の手段としてのFacebook広告(「投稿の広告を出す」を使う)

 

これが基本、というよりFacebookで直接的な効果を狙うにはこの方法しかない。
やりがちな失敗(意味のない行為・活動)はマスコミに頼ったり有力者に呼びかけることだ。
「失敗」というと少し酷だが、貴重な時間を奪い、効果も薄いのであえて言っておきたい。
それよりも王道、つまり1人1人友達にていねいに投票を呼び掛けることに集中した方がいい。

 

次郎長生家を押すグループは24日まで、ライバルに動きを見られるのを警戒して、
連絡はグループメッセージで行い、ひそかに知り合いに投票を呼び掛けていた。
ようやく追いつき追い越し、しかし抜かれた相手も真剣になり、差を広げられない。
そこで誰しも思うことで、「一攫千金の手を」と方策をたぐった。

 

努力は27日になって実を結ぶ。地元紙静岡新聞にグループの活動が大きく報道され、
「投票を呼び掛け」の見出しを付けて、最もしてほしい行動を読者に促してくれた。
この日は地元FMにもメンバーの1人が出演、Facebookだけの活動が県民に知らされた。
しかし、結果からいうとマスコミに露出した効果はビミョーだったと言わざるを得ない。

 

3建物の得票数の推移

24日以降、3つの建物が”トップ当選”をめざして激しい集票合戦を行った

 

個人や小さな事業体にとってマスコミに紹介されることは、通常の場合なら”大きな成果”だ。
しかし今回のような短期決戦では、「メディア露出効果」は即効性という点で効果が薄い。
広く伝えてはくれても、Facebookの外にいる人には無縁の話で、反応のしようもないからだ。
(投票権を得るためにわざわざFacebookアカウントを登録する人はほとんどいない)

 

■コンテストを救った”次郎長組”の活動

コンテストの存在を初めて知った時、私には「勝てる」という確信があった。
繰り返すが、舞台はFacebookで、しかもあまり盛り上がっていない。
有名人、優良企業、大組織も関与していない純粋に一般ユーザーを対象にした”選挙”、
票の動きも激しくない。「これなら頑張っても1500~2000票が当落ラインだろう」と思った。
奇抜な手を使わなくても(そんなものは事実上ない!)積み上げれば届くはずだ。
<たぶん、相手も同じことをする。粘り強くやり抜いた方が勝つに違いない>

 

 ところで主催者はなぜコンテストにFacebookを使おうと思ったのだろうか。
第一に安上がりだからだ。仕組みを作ればあとは1円もかからない。しかも公平。
大量にアカウントをねつ造しない限り、「1人1票」が担保される。
そして(想像だが)Facebookのクチコミ効果を素朴に信じた。
票集めに一所懸命になれば、自ずとコンテストは拡散し実行委の知名度が上がる。

 

終盤の競り合いがなければ、思惑外れに終わっていたかもしれない。
1グループだけが突出している場合も、他があきらめムードになり票は伸びない。
その点でも次郎長組の懸命ながんばりは、コンテストそのものを救ったといえる。
いろいろなアイデアを出しすべてを実行し、かつ基本をぜったいに外さなかった。

 

その成果はFacebookページのいいね!にも現れている。
清水港 次郎長(次郎長生家を活かすまちづくりの会)」のページのいいね!は、
12月24日は597件で旧喰丸小ページの712件から大きく後れをとっていた。
私はその日、友達1500人にいいね!リクエストを行った結果、翌日は756件に躍進。
もちろん1人の力ではなく、グループ全員で投票を呼び掛けた間接効果であろう。
1週間の踏ん張りで、越年するときにはページのいいね!は1000件を上回っている。

 

 

■コンテンツ力で差がつくFacebook広告

友達の1人1人に呼び掛ける、それも具体的に投票の仕方をも示して勧誘する。
それでも人はなかなか動いてくれない。だからしつこいと思われても繰り返し誘う。
実際に会えたなら、その場で手順を示し、いいね!クリックまでやってもらう。
かなり強引だ。しかし効果的。これを全員があきらめずにやり続ける。

 

これでも票がなかなか伸びない時には何をするか。秘策はない。
しかし、確実に計算できる手はある。それが「投稿を広告する」だ。
最終盤の競り合いには広告の出番があるだろうと思った。
「投稿の広告」にはコツがある。コツというより、共感を得られる記事を書くということ。

 

あまり知られていないが、Facebookの広告効果は”人気”に大きく左右される。
いいね!やシェアが多く得られる記事を広告すると、表示数は驚くほど伸びる。
一方、もともとの記事が伸び悩んでいるような場合、広告はあまり拡散してくれない。
自分の経験でいえば、共感力によって軽く20倍超の開きが出てくる。
800円の費用で6500表示がある一方、500円で200表示もある、という具合だ。
コンテンツそのものを磨く必要がそこにある。

 

そこで25日にFacebookページに書いた記事で反響をテストしてみた。
955円使って2148表示、リンクをクリックした人が26人。
1円で2.5表示はまずまず。加えて26人は投票してくれた可能性がある。
1万円掛ければ260得票、”理論値”ほどにはいかないだろうがかなりの反応が見込める。

「投稿を広告」の効果

「投稿を広告」の広告はFacebook内で事態を知ってもらうには格好の手段だ
ただし広告効果は記事の内容次第

 

そのように読んだ上で、私はむやみに広告発動をせずに推移を見守った。
コンクールの規約が表示されていないので何が「禁止事項」かわからない。
広告は許容の範囲と思われたが、積極的に行うべきものではないと思ったからだ。

 

■コンテストをきっかけに新しい動きも

結果的に、私が広告を再度使わなければならないという場面は来なかった。
2位、3位との差はせいぜい数百票の違いで、最後まで大差を付けられなかったが、
それでも向こうが票を伸ばすとき、こちらはそれ以上にがんばりその都度差を広げた。
取りこぼさないよう、投票をお願いした人に個別に念押しを繰り返したのだ。

 

さらに29日には有志が「清水次郎長親分の家「いいね!」祭り」のイベントを開催。
「参加」と回答すると友達を招待できる機能を徹底活用して、ダメを押しした。

 

やってきたことは知り合い、友達に声を掛け投票をお願いすることだけ。
1回で済ますところを今回は2回、3回と「現実化」するまで手を抜かなかった。
これが“ふつうの人たち”がFacebookで勝つ唯一の方法だと思う。
多くの人を投網に掛けてすくいとるような器用なことは私たちには無縁だ。

 

仲間たちと懸命に運動した効果は、単にコンテストに勝ったことだけでは終わりそうにない。
「清水次郎長の生家」は地元でも忘れられかけていたが、あらためて光を当てた。
地域活性化はお題目のように唱えられるが、自分のこととして運動する人は少ない。
今回の活動をきっかけにして、こちらの方でも新しい芽がふいてきそうだ。

 

さらによい話。ライバルだった喰丸小は村議会で取り壊しが白紙となった。
山梨の倉庫も真剣に「存続」への機運が出てきているという。
そして次郎長組の中には、ライバルだった人たちとの連携を探り始めた人もいる。
一丸となって戦ったことで新たなきずなが生まれ、それは明日の一歩につながるだろう。

 

残したい建物コンテスト」にはFacebook活用の大きなヒントがあった。

 

【Facebookをストレスなく使うために】

★制限リストより「知り合い」を使え! Facebookで難を避ける最良の方法

★Facebookの制限リスト、お手軽利用ではまる7つのワナ!

★「制限リスト」を使え! Facebookでうっとうしい人に投稿を読ませない法

★Facebookで”顔出ししても大丈夫な設定”、やっぱりなかった!

★ダダ漏れFacebookには自分でカギを! 大切な人を守りましょう!

★ブロックしてもストーカーは“顔”を見る! Facebookのプロフ写真なし、肯定論

★Facebookの設定は「公開」主義! 日本でその発想 「無茶でしょう!?」

ジャーナリスト石川秀樹>■■電本カリスマ.com

Ads by Google





…………………………………………