先日、午後の半日をつぶしてau、Softbankショップをめぐった。
iPhone6、わけあって火急に変えたいと思ったのである。
SoftBankで買ったiPhone5が最近、やけに調子が悪い。
着信しているのに鳴らず、気づかずにすぎることが頻発した。
仕事に障るので「いっそ『6』に変えよう」と思ったわけだった。
が、ひとつ問題がある。
僕は5月の初旬に「解約金拒否の論理」を書いているのだ。
各社、通常料金とは別に「特別料金」を設定し”2年縛り”をかける。
2年を経過しても1か月の猶予の後は自動的に契約は延長され、
以後、いつ解約しても「解約金1万260円(税込)」が課される。
まさに「ユーザーを脅して囲い込み」、すました顔して悪質だ。
コブシを振り上げた手前、どうにも解約金を払う気がしない。
しかし今回は・・・・、不意を突かれたわけではない。
百も承知で買い替えるのだから怒りの力を借りるわけにもいかない。
シャクではあるが、ここは少しでも痛手のない道を探ることにした。
■光回線とスマホ料金のセット割に着目
感情として「継続、つまりキャリアを変えずに機種変更」はしたくない。
それで個人的に”特典”を享受できるauに換えようと、決めた。
特典とは、会社の電話がコミュファの光回線を使っているので、
auのスマホと抱き合わせにすると月額料金が格安になるらしいのだ。
(話せば長くなるのではかいつまんで説明するが)
静岡市でもNTT、コミュファ、トーカイが光回線争奪戦をしている。
乗り換えさせる決め手の1つが「光回線+スマホ料金」のセット割だ。
au・コミュファ連合の場合、月額1250円ほど安くなる。
通信キャリア各社は新機種が出ると”乗り換え割キャンペーン”をする。
この時期、ネットには親切な人の手により「料金比較」が出る。
比較の一覧表を見て気づいたのは「大した違いなし」ということだった。
キャッシュバックだとか乗り換え特別料金だとかいろいろあるが、
キャリアもバカではない、他社に後れをとろうはずがないのだ。
それよりも圧倒的に影響が出るのは月々の通信料金だ。
その点で言えば、偶然だが「au」が今回は有利である。
思いついたら吉日、早速ショップに電話した。
どこもなかなかつながらない。
たまにつながっても、どうやらタマ(iPhone6)の手持ちがない様子。
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■電話のオペレーターに説得されて
それでなるべく繁華でない場所のショップを探して出掛けた。
待っている間に店員さんが「MNP予約番号をお持ちですか?」と聞く。
??????
「MNP」とは「携帯電話番号ポータビリティ」のことらしい。
キャリアを変えるときにはこの番号を予約する必要があるそうだ。
必要とあればするしかない、Softbankに電話した。
現キャリアにお願い申して発行してもらうというシステム!
延々と待たされる(きっと予約の人が殺到しているのだろう)。
予想通り――それはそうだろう、みすみす顧客を逃したくはない、
窓口の女性が「換える理由はなんですか」と私を説得し始めた。
いつもなら先を急いでいるので問答無用「手続きせよ」と言うところ、
感じの良い応対だったのでつい聴く耳をもってしまった。
で、かんたんに説得された(この点、私は人のよい老人である)。
実は待たされているうちに、auに魅力を感じなくなってもいた。
理由が定かでないのだが、なんだかこの店、ピンと来なかった。
電話を切って、すぐに店を出た。
もう帰ろうと思ったのだが、運転しながら思い出した。
『トーカイとSoftbankも連携関係にあったんだっけ』
(会社はコミュファ回線だが、自宅は先日トーカイに乗り換えた!)
それで今度は、iPhoneを買ったSoftBankの店に向かった。
■機種代金、本当にキャリアが払っているのか
考えてみればいま書いたように、各社、料金に大差があるはずがない。
つながりやすさも似たり寄ったり、他にサービスの違いはないから、
他社より通信料金が高ければあっという間に淘汰されるはずだ。
横並びの環境では「価格選好」がきわめて有効に働く。
だからこそ各社、料金を工夫するし、囲い込みを策すことにもなる。
手っ取り早いエサは「機種代金の割安化」「肩代わり」だった。
それが普通になってしまった今、機種代金を気にする人は少ないが、
例えばiPhone6は7万円~9万円強もするのである。
しかし知恵者が「月々割」を編み出して機種代金相当額を割引き、
実質、2年間かけて機種代金を限りなく「ゼロ円」に近づけた。
(いま私たちは「機種代金はタダ」だと錯覚している)
引き換えにその料金体系から「解除」を望めば”違約金”が発生する。
機種代金タダならペナルティは当然、だろうか?!
申し訳ないが、私はそんなに素直に”キャリアの親切”を信じない。
Softbankは前3月期決算で1兆円超の営業利益を上げていた。
機種代金を丸のみしても1兆円のぼろ儲け!――、どうしたらそうなる?
<機種代金を通信料金その他に上乗せしているからだ>と私は思う。
もっと格段に安くすべき(安くできる)通信料金をそのままにして、
見てくれだけの機種代金肩代わりをし、後から割高料金で「回収」。
こんなトリックに手もなくだまされて私たちは「解約金」をのんでいる。
■「解約金縛り」でキャリアのリスクは軽減
キャリアのどこが最初にこの手を思いついたのかは知らない。
いずれにしても3社とも「解約金縛り」の特別料金制に乗った。
都合がいいからだ。
誰かが新しい手を思いつき、サッとそちらに移動されてはたまらない。
解約金の縛りがあれば<消費者の多くはおとなしくしてるだろう>
そんな感じでこの料金制は存在しているといっていい。
光回線とスマホ料金の抱き合わせ料金は”新工夫”だった。
月額1000円まけてくれるなら2年間なら2万4000円。
乗り換えのため解約金を払っても、オツリが来る。
(しかし、現実には即乗り換えの人は少ない。キャリアの思惑通りだ)
新工夫が出れば、やがて他社も追随して同じ”サービス”を打ち出す。
「au+コミュファ」「Softbank+トーカイ」
調べていないが、ドコモとNTTのセット割もありそうだ。
のんびり屋の私はこれまで”特典”を行使していなかったのだが、
今回あらためて店で確かめると、こちらは「家族全員」が対象だった。
家内や娘の月額代金も各1550円割引きとなる。
ここにおいて、auに乗り換える理由がまったくなくなってしまった。
■不測の状況から即入手をあきらめた
正直にいえば、「解約金拒否」は貫きたい。
わずかな金額で縛られてたまるか、とキャリアを乗り換えたかったが、
長々説明したように、3社共に「解約金あり料金」である以上、
意地張ってキャリアを変えたところで同じ問題に突き当たる。
しかも今回、スマホの機種代金が3か月分残っていることが判明した。
それに9000円(解約すると「月々割」が消滅するので代金が掛かる)、
解約金は9500円だが消費税が付くと1万260円である。
私にとって2万円は「わずかな金額」どころではなかった。
結局のところ、Softbankで応対してくれた女性は冷静で、
「いま契約なさってもいつiPhone6が入手できるかわかりませんし、
3ヶ月も料金がかぶるのはもったいないです。11月まで待ちませんか?」
まったくおっしゃる通りだ。
今回ははやる心を抑えて、買い換え自体を延期することにした。
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■解約金、効果があるからこそ問題だ
iPhone6やiPhone6プラスはそれなりに売れているらしい。
ほしかった「64Gまたは128Gのブラック」はどの店にもなかった。
おっちょこちょいの私は、あれば即座に買ってしまい、
あらためて「解約金」について考えてみることもなかったと思う。
解約金はやはり効果がある、私を思いとどまらせたように。
サービスに差がない現在、消費者にとってはどこでも同じ。
乗り換えさせる手は消費者の「価格選好」を利用すること。
わずかな金額の”錯覚”で、容易に私たちは術中にはめられる。
金額の違い――それは十中ハ九は錯覚にすぎないが、
あれこれ比較しては少しでも得するように、損せぬようにと考える。
しかし冷静に見れば、トリックはあっても実質は同じだろう。
キャリアはそれを承知で節目節目でキャンペーンを行い、一方で
“激変”はあまりにリスクが高いから「解約金縛り」の安全弁を手放さない。
3社が談合してこの料金体系を作ればカルテルだ。
だからあくまで”暗黙のすり合わせ”とも言わない。
機種代金を払ってあげる代わりに、
「これはあくまで特別な料金、私どもからのプレゼントであり、
だからこそあなたが約束を破れば罰があります」という。
なんというあざとい商法だろう!
■「解約金当店負担」の店があった!!
先日、県道を走っていたら「解約金当店負担」の店があった。
犠牲を払ってでも勝ちたい店がある。
けなげで涙ぐましいが、一方、私たちは知っていなければいけない。
それでも店は儲かるし、キャリアは笑い、メーカーが拍手することを。
私たちはいつまでこんなトリックを我慢しなければならないのだろうか。
いっそ監督官庁が「不当な取引慣行」と問題視してもらいところだが、
なんでもかんでもお役所任せもまた官僚をつけあがらせ、問題がある。
ではなにをすればいいのか。
みんなが声をあげるしかない。
キャリアに競争するようけしかけるのだ。
こんなに横並びで価格選好の強い業界だ、
だれかが掟(おきて)破りをすれば、先行者利得は膨大になる。
今の「特別料金」を通常料金にして解約金をやめさせよう。
「解約金当店負担」の店が出てくる時代だ、消費者は殺到する。
が、掟破りは現れない。
先行者利得はあっても2社が追随して、3社とも静穏を乱しただけで
この決断は高くつくことを知っているからだ。
■私たちが大手キャリアを追い詰めよう
ならば私たちが大手キャリアを追い詰めるしかない。
損してもやらざるを得ない状況をつくること。
1人で騒いでも何の影響もないだろう。
しかし100万人が騒げば、さすがに平気ではいられない。
ソーシャルメディアの時代である。
不可能だとは思わない。
1社で1兆円を超す営業利益は度を越している。
「何も変わらない」とあきらめて沈黙のヒツジでいるのはやめよう。
私の推定では昨年度、解約金を払ってキャリアを換えた人は
Softbankの場合、全ユーザーの1.27%にすぎなかった。
ものの見事に「解約金の壁」が効いている。
みんなが騒げば風向きは変わるのだ。
目を覚ましてくれないか。
■この記事を書いて14か月後、事態は動き始めてきました
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